自死遺族の仲間やサポートメンバーからのメッセージ

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不動産賃貸借に関する紛争について
(和泉貴士・大熊政一・斎藤幸光・細川潔/2015年5月18日 第4回自死遺族等の権利保護シンポジウムより)

 自死遺族が遭遇する法的紛争を大きく分類しますと、先ず遺族が何らかの請求を受けるケース、つまり裁判になれば遺族が被告にされる場合と、遺族が何らかの請求を起こそうとするケース、つまり裁判になれば遺族が原告になる場合とに分けられます。
 私が今日取り上げるのは、前者の遺族が請求を受けるケースのうち、不動産に関わる事例です。不動産に関わる事例としては不動産売買に関する事例もあることはありますが、その殆どが不動産賃貸借に関する事例ですので、この不動産賃貸借に関する事例において、自死に対する差別や偏見がどういう形で現れてくるのかについてお話ししたいと思います。
 不動産賃貸借に関する紛争は、典型的には次のような形となって発生します。賃貸物件内で自死が発生した場合、遺族が、自死がその物件内で行われたことによって損害を蒙ったと主張する家主から相当多額の損害賠償を請求されるというもので、弁護士に相談が持ち込まれるケースの中ではこれが一番多いわけです。
 私どもがこういう事件を担当して痛感するのは、家主側が遺族に対して強く倫理的に非難する発言をするケースがしばしばあるということです。自死した本人とは離れて住んで同居してもいなかった遺族(親)に向かって「この人を自殺させたことは、あなた達に責任があるんだ」と。挙句の果てには「謝りなさい」「謝罪しなさい」というんですね。あるいは「(家主の)家族が精神的ショックを受けたから、慰謝料を払え」とか。いかに「自死」に対する偏見・差別意識が強いかということを痛感します。
 家主からの多額の損害賠償請求は賃貸建物内で自死があったことにより、その建物に「心理的瑕疵」を生じさせたとすることを根拠としてなされるものです。「心理的瑕疵」というのは、判りにくい言葉ですが、しばしば判決に出てくる表現でいうと、「目的物の通常の用法に従って利用することが心理的に妨げられるような主観的な欠陥」あるいは「その建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景など客観的な事情に属しない理由に起因する瑕疵」ということです。
 私たちは、はたしてこの「心理的瑕疵」なる概念を安易に認めて良いのかということを大いに問題としています。なぜならば「心理的瑕疵」は自死あるいは死や穢れに対する偏見や迷信に由来するものであり、自死を差別的に取り扱うこととなるからです。
 家主からの主な請求内容をみると、物件内で自死が起きたことにより賃貸できなくなった、あるいは安くしか賃貸できなくなったとして、家賃の数年分あるいは極端な場合は10年分といった法外な請求をしてくることがしばしばあります。また自死が起きた物件の改修費用としては、その部屋の全面改修費用を請求してくることがしばしばあります。家主によっては当該物件を全部買取れと要求してくるといった極端な例すらあります。こうした法外な請求は、やはり自死に対する偏見・差別にもとづくこの「心理的瑕疵」という考え方に起因するものです。
 家主からの請求に対して、現状では裁判所は極めて安易に「心理的瑕疵」を認定してしまっています。このように「心理的瑕疵」が一旦認定されてしまうと、「心理的瑕疵」を生じさせたのだから借主としての「善管注意義務違反」があり、遺族側には法的責任がある、さらにまた「心理的瑕疵」が生じているのだから家主側の不動産業者には、不動産業者に求められる告知義務が一定期間存在することになるから、一定期間賃貸できなくなったことによる賃料全額、または一定期間安く賃貸せざるを得なくなったことによる賃料差額の損害が発生する、といった短絡的な思考過程を経て、安易に相当額の損害賠償が認容されてしまうということになります。これまでの裁判例ではこの賃料が取れなくなったことによる損害は、概ね賃料の2年分とされることが多いと言えます。但し最近の裁判例では賃料の1年分しか認めなかったというケースも出て来ています。一方改修費用については、概ね裁判所はさすがにこれを限定的にしか認めない傾向があります。
 私たちは個々の事案の解決にあたっては、自死というものに対する偏見を当然の前提にするような内容や水準の解決に持っていくのではなく、できる限りそうした偏見に囚われないで自死遺族の置かれている状況に十分配慮したリーズナブルな内容や水準の解決に持っていくように努力しております。
 このような個々の事案における地道な努力は、立法や制度による解決を求める運動と相俟って、車の両輪のように、人々の意識を変えていくことに寄与する原動力になると思っております。

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